21世紀への提言と挑戦

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4. 21世紀への提言(3先覚者)と挑戦

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 1.堺屋 太一 21世紀への提言
 2.大失敗からのビジネス学 -「和田一夫」-
 3.誰もが「ダ・ヴィンチ」になる社会-「ウェブ3.0革命」は、我々の人生をどう変えるのか-

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21世紀への提言(3先覚者)に寄せて

  • 私が、本ホームページ制作へ至るまでに、6年の歳月を要し、平成20年63歳になった。

  • 60歳を迎える日を「脳梗塞の後遺症との闘い」の中で迎えることなど、予測したことはなかった。リハビリとの闘いの中で、60歳という「還暦」を迎えた日、新たなる暦の巡りを始めるに及んで、私には生きる指針がないことに愕然としていた。

  • 大学を卒業して、38年で還暦を迎える。過っては、そこで「定年」を迎えた。
  • 通常は、それからの人生を「老後」と称していた。
  • 平均年齢が、急速に伸びている現在、「老後」は20~30年間と続いて行く。
  • 実際は、「再生医学」等の普及によりその年月は、更に確実に伸びて行くであろう。

  • 日本の国の設計が、人生60歳で作られてきたものが、全ての分野で間尺の合わないものになってきている。

  • 脳梗塞による厳しいリハビリの時間は、「考え、感じる時間」との対面であった。
  • 読書と思索の時間の中で、多くのシニアの人たちの「情熱」の根幹を考えた。

  • 社会復帰の模索の中で、多くの人々と触れ合っていく中で、「21世紀は、シニア世代の決起」が望まれる時代ではないかと思った。
  • 肉体の衰えは、決して精神の衰えに直結しないことを感じた。

  • 多くの先覚者の中で、特に「堺屋 太一氏」「和田 一夫氏」と「田坂 広志氏」の著書の中に、「21世紀の時代を見つめ、新しい時代への息吹と人類への深い愛情に満ちあふれた示唆」に富んでいると感じた。
  • そこで、「21世紀への提言」として、その概略の紹介を考えた。
  • 多くの方が、触れられていると思うが、「シニア時代:共生社会の創造」を考える上で、この3人の先覚者の思想を、再読・再考を願っている。

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  • 1.堺屋 太一 21世紀への提言

  • 1. ”団塊の世代「黄金の十年」が始まる”(2005年10月 文藝春秋社刊 )において、
    • 堺屋 太一氏は、定年後の「団塊世代お荷物論」を否定した。

      • ① 戦後の「終身雇用」と「職縁」に基づいた日本型特殊社会を築き上げ、ここに来て定年
        • 後の不安に脅えているかのような団塊の世代が、実は新たに高齢者市場を作り出し、自らの新たな雇用を作り出すという新しい社会を創造する潜在力を持っていると主張した。

      • ② 団塊の世代は、広義では「1943年~1953年」生まれの世代を指し、狭義では
        • 「1947年~1949年」生まれの世代を言うとした。

      • ③ 今の日本を創ったのはこの団塊の世代の人々に負うことが大である。この世代は日本の
        • 高度成長をもたらしたが、その要因となったのは、官僚主導・業界協調体制・日本式経営・核家族・職縁社会であった。
        • ちょうど規格品の大量生産が効を奏した時代で、それを支えたのは、教育では没個性と辛抱教育で規格化の精神を教え、機能では東京一極集中で有機型地域構造を作り、社会では供給者優先の思想で好若嫌老の風潮を生んだ。

      • ④ 高度情報化時代の到来の中で、会社という組織においても、団塊の世代は、実質的に次
        • の世代に席を明け渡しているが、ITについて行けなくなっているわけではない。
        • 戦中派以前とは異なり、それを受け入れ、使う技量を持っている。

      • ⑤ 労働力人口は「15歳以上65歳未満」という従来の年齢観を、「22歳以上70歳未
        • 満」という現実に合ったものに変えて、いろいろな制約のある定年延長という形でない自由な労働力を作り、多様な働き方ができるように多様な労働形態を作り、70歳まで働くことを選べる社会になる必要がある。
        • もちろん「生涯現役」の思想も含まれているであろう。

      • ⑥ これからの時代を変えるのはやはり団塊の世代であり、この世代がその気になればでき
        • る!これからを黄金の十年にしようではないかと呼びかけた。

  • 2. 今こそ因果逆転の勉強法を
    •  (文芸春秋2007年12月号「堺屋太一」:p201~208抜粋)

      • 1)団塊世代定年開始の2007年に堺屋 氏は論文を発表!

      • ① 1975年小説「団塊の世代」を発表し、大胆な時代の流れの予測は、ことごとく的中し
        • たと評価された。
        • 新規事業とコンビニエンスストアの出現;勝ち組・負け組の出現;金融リストラの開始;年金や福祉の増大により、財政難に陥る財務官僚の苦悩など、ことごとく、時代を読み切ったと評価された名著である。

      • ② 団塊の世代が、定年を迎え、2007年問題と騒がれた2007年12月号に「今こそ因果逆
        • 転の勉強法を」-会社を離れて何をすべきか。知的好奇心を磨けーの論文が発表された。その中で「学ぶ」というテーマで新しい時代への提言がなされた。

        • イ. 団塊世代が定年の時期を迎えはじめました。定年で退職し、これから別の仕事に
          • つく、それはまた新たな勉強や趣味を始める絶好のチャンスでもあります。
          • 従って2007年現在、「何を学ぶか、どう学ぶか」を考えるとき、団塊世代は「今までの勉強法」をいったん捨てなければなりません。
          • そのうえで「新しい勉強法」を始めるためには、因果逆転の発想転換が必要です。

        • ロ. 団塊世代が生きた社会は、典型的な「近代工業社会」でした。
          • その精神的基盤は「物財が豊富なことが幸せだ」というものです。

        • ハ. しかし、1980年代から始まった「知価革命」によって近代工業社会は崩れ出し
          • ます。「物財の豊富なことが幸せだ」という客観的科学的普遍的な発想が失われ、「満足の大きいことが幸せだ」という主観的な価値観へと一変したのです。

        • ニ. 近代工業社会では、小説や映画にもリアリティが重んじられてきました。
          • しかし「スター・ウォーズ」にはじまり80年代以降は「E.T.」や「ハリー・ポッター」「マトリックス」まで、ストーリーも格闘描写もリアリティのないものが大ヒットします。人間が自らの主観のなかに閉じこもって、科学的、客観的知識を軽んじ始めたとも言えましょう。
          • 「近代工業社会」の中で、物財の豊富さを求め、客観的知識を身につけてきた団塊の世代が、これからは「知価社会」の、主観的な時代に生きる。
          • かつてのやり方では通用しない。これこそ、「新しい勉強」が必要な理由なのです。

      • 2)「好き探し」の3つのポイント

        • 人間が受験や会社の仕事のためでなく、主観的な満足を求めて学ぶためには、3つの重要なポイントがあるとして次の3点を強調している。

        • 深く読み込んでいくと、そこに個性豊かな新しい世界や仕事を決めて行く手掛かりが含まれている。ここでも「インターネット」の重要性が説かれている。

      • 第1に「選好事性」、つまり「自分は何が好きか」を探すことです。

      • ① 実はこの「好き探し」が非常に難しい。人は「これが有利だ」と教えられたものを「好
        • きだ」と勘違いしやすい。これが近代工業社会に生きた人間の大きな弱点です。

      • ② 思い込みを捨てて、本当に好きなことを選ぶのが「選好事性」です。

      • ③ では、本当に好きはどうして探すのか。第一は「いくらやっても疲れないこと」です。
        • もうひとつは、「これについてなら、誰とでもいくらでも喋りたい」というものを探す。たとえば阪神タイガースについて微にいり細をうがって、何度話しても飽きない。

      • ④ 人から「あいつが来るとまたあの話をするぞ。かなわんなあ」と閉口されるならば、そ
        • れは本物の「好き」です。海外旅行でも映画や音楽でも、ヨン様のおっかけでもいい。「収入につながるかどうか」を考慮せず、まず好きなものを探すべきです。

      • 第2に、「適時代性」を考えることも大事です。

      • ① これから始めようとすることが、時代に合っているかどうか知ることです。
        • というのは、時代に合わないものが大々的に喧伝されていることもあるからです。

      • ② 典型的なものが「地域貢献」でしょう。
        • 役人や世間知らずの学者は、退職したら地域に戻って、少年野球の指導や清掃ボランティアをしましょうなどと言っていますが、まったく適時代性がない。

        • なぜなら「地域社会」は既に消滅しているからです。
        • 戦前の日本では事件を起せば「村の恥」と言われたけれど、戦後は「団地の恥」という言葉もない。

      • ③ こうした帰属意識がない社会でボランティアなどすれば、必ず迷惑がられる。駅前を毎
        • 朝掃除すれば喜ばれるだろうと思いきや、行政は「ボランティアは雨が降ったり三連休だと休むから、市民から苦情がきてかえって困る」と文句を言います。ボランティアは誰かのためになると思わず、「自分が好きなことだから、みんなは迷惑であってもやる」ものなのです。

      • ④ ではどういうものに「適時代性」があるか。
        • それは地域や 親族、職場など別の基準で選ばれた社会を超えた、「好み」によって結ばれる集団です。近ごろ俳句の会や、皇居一周を歩く集団などが盛んです。
        • これには地縁、血縁、職縁のいずれとも関係なく同好の士が集まっています。

      • ⑤ 幸い、インターネットのおかげで、非常に変わった趣味であっても仲間が見つけやすく
        • なりました。
        • これまで職場や地域の中で、同じ趣味の人を探さなければならなかったのが、インターネットなら千人に一人、万人に一人の同好の士に出会うのも容易です。

      • ⑥ 「好きなこと」によって集まった人たちとならば、いくらでも話題があるし、疲れま
        • せん。次の企画をたてるのも楽しいからと続けていくうちに、自然にその人脈の中心になれる。十年たてば、その分野の長老になります。好きなことの長老になるほど幸せなことはありません。

        • 「好きなこと」を探すことこそが、地域社会と職縁社会が消滅した、現在という時代に適合しているのです。

      • 第3番目には「馴社会性」。社会に馴染むことも考えたほうがよい、というものです。

      • ① ところが評論家やメディアはしばしば「馴社会性」のない分野をリタイア後の趣味とし
        • て勧めています。

        • たとえば蕎麦打ちです。

        • 六十代から蕎麦を打ち始めても、そこには社会に拡がっていく構造がない。
        • 蕎麦屋を開くまでになればいいのですが、素人が趣味で打った蕎麦を、お金を払って食べてくれる人はいません。

      • ② 一方で、農業ならばどうでしょう。
        • 「生産者のわかる食品がほしい」という社会のニーズがありますから、昔の知り合いや新しい友人たちに農産物を直売するような組織をつくることも可能です。
        • 社会全体が主観的な満足を求めているので、「このように作りました」というプロセスのある商品や情報ならば、十分に価値がある。

      • ③ 自分の「好きなこと」に邁進していけば、そこに共感してくれる顧客がいるはずです。
        • 逆に、単に安価な野菜をつくるのでは、現代社会では適しません。
        • 「ほんとうに好きなこと」「時代に適したこと」「社会に馴染むこと」、この3点を備えたものを選べば、自然に上達し、仲間が集まり、幾分かのお金が得られる仕組みを作れる。それで結果的に月十万円くらいの収入が得られれば真に幸せです。

      • ④ 自分の好きなことを存分にやって、年金にプラス十万の収入があれば、会社に追いまく
        • られた現役時代よりも、はるかに満足の大きな暮らしができるでしょう。

      • ⑤ そのためには「稼げそうなこと」をまず選ぶという、近代工業社会の常識を捨てる。
        • ラーニング(学習)の前に、不要な知識をアンラーニング(脱学習)すること、「新しい勉強法」を学ぶためには、これまでの勉強法を忘れることが必要なのです。

      • ⑥ 勤勉に生きてきた団塊の世代は、「好きなことをして楽しく暮らしなさい」といわれる
        • と、罪悪感を覚えて、腹立たしく思うかもしれません。
        • 「そんなことで喰えるか」「何を呑気な、現実は厳しいんだ」という人もいるでしょう。実はそれが間違いです。人間は喰うために生きているのではなく、生きるために喰っているのです。稼ぐのは目的ではなく、楽しむために稼ぐのです。

      • 3)辛抱する勉強はやめよう

        • 「新しい勉強法」のためには、「好きなことを学ぶ」ことに加えて、もう一つの因果逆転換が必要です。
        • 「六十代から新しいことを学んでも役に立たないでしょう」という人がいます。
        • これは、目的のために苦しむ旧来の勉強法に縛られているゆえの間違いです。
        • 今こそ官僚による管理教育、「辛抱する勉強」のくびきを離れて、「好きなこと」をわがままに勉強する。これこそが情報戦争で一億玉砕せずに、日本を再生する道です。

      • 4)「わがまま」で高齢者マーケットを

      • ① 誰もが主観的満足のために生きるようになると、新たなマーケットが創出されます。
        • いまは規格大量生産マーケットで、消費者の好きなものではなく、生産者の作りやすいものを使わされているだけです。
        • 役人が規格を決め、それに合わせて企業の技術者が設計をした規格品を、大量生産する。そのなかから選択せざるをえないから、楽しくありません。

      • ② みんなが、わがままに「好きなもの」を求め、わがままに作り出すようになれば、食べ
        • 物から住居や観光サービスまで、まったく発想の違う物財が生れてきます。

      • ③ もうひとつ大事なのは、子どもに金やモノを残そうとは一切考えず、わがままに暮らす
        • ことです。

      • ④ だから高齢者は、わがままに、自分のために暮らせばよい。
        • 高齢者のニーズが高まれば、新たな「高齢者マーケット」が生れ、同時に高齢者が供給者になる。
        • たとえば開業医は、日本で最も平均年齢が高い職業で、眼科などを除くと平均60.5歳です。なぜならお客さんである患者に70代の高齢者が多いから、20代のインターンを終えたばかりの医師より、じっくり話を聞いてくれる六十代の医師に信頼感を持つのです。

      • ⑤ あるいは最近の六十代の女優さんの活躍ぶり。団塊よりも年上の人が美人女優として活
        • 躍しています。これもさらに高齢の人たちが六十代女優を応援しているからです。 自分がわがままに暮らすことが、次の世代に高齢者産業を育成することになるのです。好きなことの長老になって活躍 している高齢者のほうが、小遣いを与える老人よりも、若者からの尊敬を得られることは間違いありません。

      • 5)「60の手習い」のコツ

      • ① 私は、60歳から十年間、ほんとうに好きなことを勉強すれば、必ずその分野の長老に
        • なれる、と言ってきました。

      • ② ところが「七十歳になってからでは、知識を活用して稼げる時間は何年もない」と諦め
        • ている人がいます。これは未だに、勉強は稼ぐためのもので、辛抱して知識や技能を身に付けるものという、規格大量生産社会のワクに囚われているのです。

      • ③ そうではなく「勉強する過程」そのものが面白く、満足なものを選ぶのです。 
        • 60代からの勉強が「投資」で、70代からが「回収」だと考えていると、結局、60代は苦手なことを辛抱して勉強し、それでは大して身につかないから70代は働けないという、二重の不幸に陥ります。

      • ④ また、60歳までの仕事で培ったことを応用しようと思うのもやめたほうがいい。それ
        • は、職場が押し付けたことで、好きでも得意でもない場合が多いからです。

        • それにこだわっていると、本当に好きなことができません。
        • 結局は、終身雇用の元職にしがみついて、辛い晩年を送ることになります。

      • ⑤ だからこそ60歳からは「好きなこと」、勉強の過程が自分にとって「楽しい報酬」と
        • いえるものを探す。そうすれば辛抱は必要ないから、'高齢者でも疲れません。

      • ⑥ 60歳から好きなことを勉強する。そして10年後には、読んだ人が、「目からウロコが
        • 落ちた」というような本を書こう、と決心する。
        • いわば、文芸春秋社が喜んで出版するような視点を開くのです。

      • ⑦ 海外旅行でも、スポーツでも、農業生活でも、薬の飲み方でも、何でもいい。
        • 自分が好きなことを、わがままに勉強して、目からウロコが落ちるような本を書く。 それが団塊世代にとって必要な「新しい勉強法」でしょう。

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  • 2.大失敗からのビジネス学 -「和田一夫」-

  • 1.和田 一夫 氏のプロフィール;「オフィシャルホームページ」より

HP:http://www.wadakazuo.com/

  • ・中華人民共和国上海市栄誉市民     ・国際経営コンサルタント 
  • ・前八佰伴国際集団 総裁        ・株式会社ハウインターナショナル 取締役会長 
  • ・上海国際経営塾 塾長         ・福岡大学経済学部 非常勤講師
  • ・株式会社 和田総研 代表取締役社長 ・財団法人 大平正芳記念財団 理事 他

  • 2. メッセージ

    • 私は人生において3度の失敗をした。
    • 一度目は熱海の大火。
    • 二度目はブラジルヤオハンの撤退。
    • そして、三度目はヤオハンジャパンの倒産であった。
    • 失敗をおかした時、人間はそこから必ず得る物がある。
    • 私は栄光と挫折の中で一つの答えを得たのである。

    • 無一物中無尽蔵

    • 一度目の失敗の時、私の母が教えてくれた言葉である。
    • この言葉は、数々の成功と失敗により私のものとなった。
    • 全ては自分の中にある。
    • 私が50年間にて学んだことを多くの企業家のために伝えたい。
    • そして今カンパニードクターとして再起を誓った。
    • 夢は必ず実現する。
    • 私はこの言葉と共に生き、そして実現するために、進み続けたい。

  • 3.「大失敗からのビジネス学」(角川書店;2002年:和田 一夫[著])の中で全ての思想を
  • 「学びと祈りと経験」で深められた「21世紀の提言」というべき数々の示唆を発せられている。


    • 1)「1番目のペンギン」になること(同書p8~10より抜粋)

      • ①「あなたはペンギンだ」と言われた日

        • 日本の流通業としては初めての中国本格進出となった上海第一八佰伴百貨店オ-プンの翌々年(平成9年)、私は上海市長から名誉市民賞を授与された。
        • このとき趙啓正浦東新区担当副市長から「あなたはペンギンだ」と言われて、なんのことかと驚かされたのを覚えている。趙副市長は続けてこう言った。

      • ②「ペンギンは群れて生活していますが、別の場所に動くときには、ます群れの中の一羽だ
        • けが動いて、残りのペンギンはその1羽を見ている。それで、たしかにその方向に行けたとわかると、2番目のペンギンが動きだす。そこまで確認してから初めて、他の群れは一斉にその方向に動いていくと言われているのです。

      • ③ 中国への投資も、まず和田さんのヤオハンが動いて、その成り行きを世界中が見ていた
        • つまり、和田さんには、1番目のペンギンになっていただいたことになるのです」そして、趙副市長は私にペンギンの絵をプレゼントしてくれたのである。

      • ④ 天安門事件以来、中国に向けての投資はピタリと止まっていたが、ヤオハンが中国進出
        • を果たしたのをきっかけに、再び世界中が中国に足を踏み入れるようになっていたのだ。それを考えたのならば、たしかに私は一番目のペンギンになっていたとはいえるのかもしれない。

    • 2)ビジネスでは「一番目のペンギン」になることの意味はとてつもなく大きい。

      • ① 1番目、2番目のペンギンの成り行きを見てから動き出す「群れをなしたペンギン」に
        • なるのは、安全策といえる。
        • だが、そのペンギンたちは、新しく足を踏み入れた地においても「多勢の中の一羽」としてしか見てもらえないものである。
        • オンリーワン、ナンバーワンになれないのはもちろん、せっかく新たな地域に進出しても、「地の利」を活かしていくことさえ難しくなってしまう。

      • ② 1番目のペンギンになるのは、勇気が必要なことである。
        • だが、それができたのならば、誰も考えてなかったチャンスをどのようにでもビジネスにつなげていける。
        • そして、私が中国から感謝されたように、新しく移った先に住んでいる人々の支援も受けられ、協力関係が築いていけるのである。
        • 海外ビジネス経験のある方ならば、このことがどれだけ力強いかはおわかりだろう。

      • ③ 人に追随して、誰もが目を向けているところをターゲットにするのではなく、人が関心
        • を示さないところ、避けているところに目を向けることの意味は大きい。
        • 常にそうした姿勢を持ち続けていてこそ、一番目のペンギンになる可能性が出てくるのである。経営者、サラリーマンといった立場は問わず、不況の中で「勝ち組」になるには、危地に踏み込んでいける勇気は何より大切になってくる。

  • 4. ビジョンを成功につなげるための法則(同書p14~24 抜粋)

    • 1) やりたい「何か」を見つけること

    • ① ビジネスでの勝ち組を目指す人が、新規事業を考える際にもっとも大切なのは、「本当
      • に自分がやりたいと思っていることを実行する姿勢」である。

    • ② これは、そのビジネスが自分の趣味や好きなジャンルの延長であるのかどうか、という
      • のとは少し違う。
      • 趣味をそのまま仕事にできる人間というのはそれほどいないものだ。

    • ③ これまでの人生で、あるいは企業人として仕事に全力投球する中で、何かの「気付き」
      • があったのならば、そのことがすでにあなたの「やりたいこと」につながるものになっているはずである。

    • ④ どんなにわずかなことであっても何かに興味を引かれ、その何かを「こうしたい」と考
      • えたのならば、そこから勝算を伴う新規事業を生み出せていけるものだ。

    • ⑤ それとは逆に、それまでまったく触れてこなかったこと、あるいは興味のなかったこと
      • を、ただ「ビジネスになりそうだ」と考えて実行に移すのでは、失敗は目に見えている。

    • ⑥ 本気で考えている「こうしたい」を持っているかどうかは、そのビジネスを「オンリー
      • ワンのビジネスにつなげられるかどうか」を決めるターニングポイントになってくるのだ。

    • ⑦ ヤオハンジャパンの倒産後、「カンパニー・ドクター(経営コンサルタン)」として再起し
      • た私のケースでいえば、「私の大失敗を世の中に伝えていきたい」というのが、自分が本当にやりたかったことであった。
      • そうした自分ならではの願いを持てたときに初めて、それをかなえていくためのオンリーワンのやり方が見えてくるのだ。

    • ⑧ ビジネスの手段を探すより、やりたい何かを見つけることが先決である。
      • そして、それが見つかったならば、大失敗を恐れず、実行に移していけばいい。
      • たとえ小さな失敗をしてもそれはかならず成功につながっていくはずである。

    • ⑨ その際、自分か考えた分野に関して、自信が持てないのであれば、急ぎすぎないよう
      • にしてほしい。それが既存のジャンルの事業であったのならば、視察でもアルバイトでもいいから、実際にその現場に飛び込んでいく姿勢も重要になる。

      • 余計なプライドは捨てて、努力は惜しまず、「学べるものはすべて学ぶ」という姿勢を持つべきだ。そして、自分のやりたいことが成功に結び付けられるという「確信」を得られたときに初めて本当のスタートを切るようにしてほしい。

    • 2) 人真似ではない自分だけのもの

    • ① スタートを切られるという確信が得られたときでも、「それが単なる人真似」になって
      • いないかをもう一度、見定めておくのも必要である。

    • ② 一見、オリジナリティがないように見える事業が成功することもある。
      • そうしたケースにおいても、その発想と方法論を探っていけば、どこかの部分で必ず人真似ではないオンリーワンを持っているものである。
      • また、“どこかで誰かが、あるやり方で何かを売っているのが成功している”といったことを耳にしたとき、自分も同じことをやれば成功できる、と考えるのは大間違いである。

    • ③ たしかに、そのやり方に対して100パーセントのコピーができるのならば、「オリジナ
      • ル」に追随することで成功するケースもあるかもしれない。だが、オリジナルの事業には必ず、他人には「気付かれない何か」かがあるはずなのだ。
      • 100パーセントのコピーをしているつもりでも、実はそうはなっていないことが、案外多い。

    • ④ 第一歩を踏み出すときに、その方向性を見誤っていては話にならない。
      • これからやろうとしている事業が「本当に自分がやりたいことであるのかどうか」、そしてそこに、たとえ一点であっても「人真似ではない自分だけのものがあるのかどうか」ということについては、自分自身に何度、問い掛けてみてもいいはずである。

  • 3) キーワードは「スピード」「先制」「集中」

    • ① ベンチャーとして起業する際、あるいは会社の新規事業を興す際の「基本姿勢」にはい
      • くつかのポイントがある。
      • そのキーワードとなるのは、「先制」「スピード」「集中」の三つである。

    • ② 「先んずれば即ち人を制し……」という言葉があるように、新規事業にとっては、いか
      • に先制して、真新しい分野でのシェアを確保することができるかが生命線になってくる。

    • ③ 知名度もなければ、資金力もない、実績もない……といった場合、既存の事業をそのま
      • ま踏襲しても勝負にならないのは自明のことだ。「1番目のペンギン」になれる分野が見出せたならば、その一点に勝負を賭けるのが鉄則といえる。

  • 4) 起集家が持つ三つの心構え

    • 先に挙げた三つのキーワードを補足する形になる「起業家の心構え」についても、三つ挙げておきたい。

    • ① 失敗を恐れない

      • 事業というものは、日々挑戦の連続であり、失敗は日常茶飯事になる。
      • 失敗を恐れていては、どうしてもスピードがにぶってしまう。
      • 失敗してしまったならば、そのとき初めて失敗を分析し、その失敗をいかに次に活かすことができるかを考えるようにすべきである。

    • ② 若者と経営経験者との融合

      • 若者の感性・センスと経験者の知恵を融合させる。
      • 実をいうと、これこそがアメリカ・シリコンヴァレーの成功の秘訣になっている。
      • 少数(あるいは一人)の経験者と多数の若者で始めた事業は好結果に結び付きやすい。こうした布陣を敷けば、「先制」と「リスク管理」の両面に目を配った攻防一致の事業ができるからである。

    • ③ 時流を捉え、やるべき事を見定める

      • このことは、勝ち組の事業を始める最大の基本となる。第一に「時流」については細心の注意を払う。だが、そこにこだわりすぎるのではなく、それ以上に「自分の天分」「自分自身に与えられたもの」「いま何をなすべきか」について考える。自分を見失ってしまっては、どんな分野であってもオンリーワンのものは確立できないということである。

  • 5)「リスクを最小化」する

    • ① 何かを始める際、「リスクの最小化を図る」のも大切である。
      • 「失敗を恐れてはいけない」という心構えと矛盾しているように思われるかもしれないが、そうではない。
      • 現在は、「失敗を恐れる必要のない時代」であるとともに「失敗するのが当たり前の時代」になっているともいえるのだ。
      • 他の誰もが考えつかないところ、成功の可能性が低いと思われているところに飛び込んでいってこそ、他の人間が掴めない大きなチャンスに巡り合えるのである。
      • そして、そうしたビッグビジネスを求めるならば、何度、失敗に直面してもおかしくない。

    • ② 失敗を「前提」にして起業するのでは道は拓けてこない。だが、失敗に対する「防衛
      • 策」を考えておくのは賢明なことである。
      • 何度失敗してもいいんだと割り切れているような人であるなら、「やり直し」をし易くさせる方法論もあるものだ。

    • ③ リスクというのは、「お金の問題」と「時間の問題」の二つにある。金銭的な部分での
      • リスクの最小化を図るのならば、できるだけお金を使わないで済む方法を考えることだ。
      • 「そんなに虫のいい話はない」と思われた読者の方もいるかもしれない。
      • だが、実をいうと、この問題は、「二十一世紀型の起業」を考えるうえでは非常に重要なポイントになってくる。

    • ④ 大企業が半導体事業への投資に失敗したように、これからは「資本投資」の時代ではな
      • くなる。現代は、いかに資本を投下しないで成功につなげられるかが問われる「ゼロから出発」する時代であり、「アイデアが最大の武器」になっている時代である。

    • ⑤ できるだけお金を使わないようにするのは、ネガティブな発想なのではなく、事業内容
      • を考えるうえでの重要な出発点である。
      • そして、この考え方を発展させたならば、こうした時代に合わせた起業マニュアルというのも見えてくる。

    • ⑥ 「自己資金のすべてを二八に投入しない」「借入金をつくらない形で起業する」という
      • 単純きわまりないやり方がそれである。
      • これは、「資金をどれだけ持っているのか」「どの程度の成功を求めているのか」ということによっても変わってくるケースバイケースの発想となるが、基本として、こうした資金面での問題を見直してみるのもいいはずだ。

    • ⑦ また、時間のリスクに関していえば、「ダメたったときにはすぐに撤退する潔さ」も必
      • 要になってくる。
      • たとえば、半年間事業を続けてみたのに、どこにも成功の兆しが見えなかったとする。以前であれば、それくらいの時間は辛抱の範囲といえたかもしれない。だが、現在では、1年が過去の10年にも匹敵する時間の流れになっているのだ。
      • いわば、半年間、芽が出なかったというのは「5年間やっても芽が出なかったこと」を意味する。

    • ⑧ 「お金」と「時間」のリスクを極力抑えるというのは、ネガティブな発想ではなく、
      • 21世紀型のやり方である。
      • やり直しは何度でもきく。まだ、やり直しがききやすいようにしておけばいい。
      • そうして、失敗を繰り返していけば、やがて大きな成功を手にできるに違いない。

  • 6) 「ビジョン」からすべてが始まる

    • ① 自分の会社でなんとか頑張っていこうと考えている人にとっても、何より大切なのは
      • 「夢」を持つこと、そして、その夢を「確固たるビジョン」にしておくことであ る。
      • それは、ただの理想論のように聞こえるかもしれないが、そうではない。

    • ② たとえば、元をただせば一介の八百屋に過ぎなかったヤオハン(ハ百半)を、世界16ヶ
      • 国・地域に約450店舗を展開する国際流通グループにまで成長させることができたのも、私がそうしたビジョンを持っていたためである。

    • ③ そして、そのヤオハンジャパンが倒産しでしまったあと、私が再び世界的なビジネスの
      • 場に戻ってくることができたのも、「自分が描いたビジョンを必ず現実にする」という信念を持つことができていたからなのだ。

    • ④ また、ヤオハン倒産後に私かカンパニー・ドクターになるのを決意した時点では、資金
      • もパートナーも持たなければ、何の見通しもたたない「無一物」ともいえる身であった。だが私は、その後、身ひとつで福岡県・飯塚市に移住したときには、「この地でインターネット無料相談を始めて、そこから、国内外の複数企業を結び付ける斡旋・仲介事業にまで発展させていく」というビジョンを描いていた。

    • ⑤ こうしたことは、自分を勢いづけるための「遠い夢」として考えていたものではない。
      • あくまでも「現実になる夢」としてビジョンを立てていたのだ。
      • そして、そうした気持ちがあったからこそ、それらのビジョンがいま、現実になろうとしているのである。

    • ⑥ 私のビジネスパートナーであり、ハウインターナショナルの社長である正田英樹は、以
      • 前に1度、こう訊いてきたことがあった。
      • 「なぜ、和田代表の周りには、これだけ多くの人やビジネスチャンスが集まってくるのですか?」だが、それはやはり、私が自分のビジョンに信念を持ち、それを本気で口にしているからなのに他ならない。

    • ⑦ 私が無一物になっていたとき、そのビジョンを「手伝ってくれる」という人が現われ、
      • 最初の会員企業になってくれた経営者も現われた。

    • ⑧ 信念を持つ人のもとには、それを手伝ってくれる人、後押ししてくれる人たちは自然と
      • 集まり、成功への道は知らず知らずに拓かれていくものである。
      • “現在”に対してネガティブになっていたり、失敗を恐れていたりしてはいけない!
      • とにかく明確なビジョンを描き、それを堂々と□にできるだけの信念を持つことから、すべては始まるのである。

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 1.堺屋 太一 21世紀への提言
 2.大失敗からのビジネス学 -「和田一夫」-
 3.誰もが「ダ・ヴィンチ」になる社会-「ウェブ3.0革命」は、我々の人生をどう変えるのか-

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  • 3.誰もが「ダ・ヴィンチ」になる社会:
  •  -「ウェブ3.0革命」は、我々の人生をどう変えるのか-

  • シンクタンク・ソフィアバンク代表
  • 社会起業家フォーラム代表:
  • 多摩大学大学院教授  田坂広志 氏は、上記の論文を含め、多くの著書や論文、諸活動の中で日本と世界の「新しい時代の到来と人類の取り組み」への提言をされている。
  • HP:http://jsef.jp/community/


  • *これからの生き方を考える上で、世界の参加型社会への方向性など「21世紀の予言と提言」と「ウエブ3.0革命」の世界を、「上記論文」の中から、提言の概略を紹介させていただくことにする。
  • PDF:http://jsef.jp/about/pdf/davinchi.pdf

  • 1. 魅力なき「イノベーション論」

    • いま、世の中に「イノベーション」という言葉が溢れている。
    • しかし、残念ながら、これらのイノベーション論は、いずれも、政府や企業の視点で語られており、いま生活者や消費者が本当に求めているものが、見落とされている。

    • その意味は二つある。

      • ① 一つは、生活者は、イノベーションの恩恵を、ただ政府や企業から与えられるものとし
        • て「享受」したいとは思っていない。これからの時代の生活者は、イノベーションに、主体的・積極的に「参加」したいと思っているのだ。

      • ② もう一つは、これからの時代の生活者がイノベーションに期待しているものは、「物質
        • 的な豊かさ」ではない。「精神的な豊かさ」をこそ求めているのだ。

      • この二つのことを理解しないかぎり、これからの時代、いかなるイノベーション論も、魅力を持たないだろう。

  • 2.  「ウェブ2.0革命」が世界を席巻

    • いま、「ウェブ2・0革命」が世界を席巻しつつあるからだ。1995年に始まった「ネット革命」は、2005年を境に「ウェブ2・0革命」へと進化したが、この情報革命の最先端の潮流は、これから「イノベーション」というものに根本的なパラダイム転換をもたらす。

      • ① 第一に、イノベーションの「主体」が変わる。
        • これまで、イノベーションとは、政府や企業が主導し、少数の優れた研究者や技術者、ビジネスマンや起業家、政策担当者や専門家が起こしてきた。これからの時代は、それだけでなく、無数の生活者や消費者が、イノベーションを生み出す「主体」となっていく。

      • ② 第二に、イノベーションのめざす「目的」が変わる。これまでのイノベーションは、
        • 「より速く、より効率的に、より快適に」というスローガンのごとく、「物質的な豊かさ」を実現するために行われてきた。

        • しかし、これからの時代のイノベーションは、むしろ、「より深い喜びや満足、幸福感を求めて」という言葉のごとく、「精神的な豊かさ」を実現するために行われるものになっていく。

      • ③ 例えば、「商品開発」。現在では、多くの企業が「プロシューマ型開発」という手法を
        • 取り入れ始めている。この「プロシューマ」とは、プロデューサ(生産者)とコンシューマ(消費者)の造語であり、27年前にアルビン・トフラーが『第三の波』という著書の中で提唱した概念であるが、企業と顧客が一緒になって智恵を出し合い新たな商品を開発するという手法である。しかし、この手法は、27年前には「夢物語」と思われていた。

        • それが、ネット革命によって、企業と顧客の対話が容易になったため、実現したのである。

  • 3. これまでの「常識」が壊されていく
    • ① そして、この「参加型イノベーション」の時代には、これまでの市場や社会の「常識」
      • が、根本から壊されていく。

    • ② 例えば、プロシューマ型開発は、「商品開発は、企業が行なうもの」という常識を打ち
      • 壊し、「商品開発は、企業と顧客が共同して行うもの」という「新たな常識」を生み出しつつある。

    • ③ 「商品販売」の分野でも、従来の常識を打ち破り、まったく新たな「商品販売」の手法
      • が生まれつつある。 その一例が「ギャザリング」(集団購入)である。

      • これは、企業の商品販売サイトにおいて「100個まとめて購入すると2割引」といった特典を提供すると、顧客同士がウェブ上で声を掛け合って百人を集め、割引価格で購入するという手法であるが、これは、「商品販売は企業が行うもの」という常識を打ち壊した。

    • ④ 「アフィリエイト」は、「商品マーケティング」の常識を壊した。このアフィリエイト
      • とは、消費者が自分の好きな商品を個人のブログなどで紹介し、それが販売に結びついたとき、企業からポイントという形で報酬を得るという仕組みであるが、この仕組みによって、「マーケティングは、顧客が行ってくれる」という時代になったのである。

    • ⑤ すなわち、消費者の情熱や智恵、アイデアやネットワークによって様々なイノベーショ
      • ンが起こるのである。

  • 4. 誰が「社員」で、何が「会社」か
    • ① では、こうした「参加型イノベーション」が進んでいくと、企業経営においては、何が
      • 起こるか。 どこまでが会社で、どこまでが社員か。 その境界が、曖昧になっていく。

    • ② 例えば、プロシューマ型開発を考えてみよう。
      • ある企業が、ウェブサイトにおいて顧客に集まってもらい、自社の商品のデザインの改良について意見を出してもらう。しかし、こうした顧客コミュニティには、しばしば、自社の企画部門の社員よりも商品について詳しく、様々なアイデアを出してくれる顧客が参加することがある。

    • ③ こうした時代に、企業の経営者は、発想を変えなければならない。これからの時代に
      • は、経営者は、次のような自慢の言葉を語るべきであろう。
      • 「当社の顧客コミュニティには、優れた智恵を出してくれる多くの顧客が、これほど集まってくれている」「当社の周りには、当社の商品を愛し、その魅力を他の顧客に伝えてくれるアフィリエライターが、これほど多く集まってくれている」。

    • ④ では、なぜ、それが求められるのか。
      • 資本主義というものが、いま、大きく進化しつつあるからである。

      • すなわち、従来の「金融資本」を中心とした資本主義が、いま、「知識資本」を中心とした知識資本主義に進化しつつある。そして、その「知識資本」の戦略も、単に企業内に保有する特許や知的所有権、知的人材を誇るだけの閉鎖的な戦略ではなく、企業内だけでなく、企業の周辺に広げている異業種連携、人的ネットワーク、顧客コミュニティ、社会的信頼、ブランドなどの「知的資本」を重視する開放的な戦略に向かっている。

      • それゆえ、企業には、社内の限られた人材の智恵だけでなく、社外のキーパーソンや顧客の智恵を集められるかが、深く問われるようになっていくのである。

    • ⑤ そして、こうした動きは、企業内の人材の在り方にも大きな影響を与えていく。
      • すなわち、企業内でブログやSNSなどが普及すると、「情報は送られてくるものではなく、自分から主体的に取りに行くもの」という意識や、「魅力的な情報を発信できない人の周りには、誰も集まってこない」という文化が広がっていく。そして、その結果、情報感度の低い人材や、価値ある情報を提供できない人材は、たとえマネジャーの肩書きを持っていても、社内で認められなくなる。

  • 5. 行政サービスも「参加型」になる
    • ① 「こうした参加型イノベーションは、民間企業の商品やサービスだけか」と思われる方
      • がいるかもしれない。

      • そうではない。こうした動きは、かならず「行政サービス」においても起こる。行政と住民が共同して新たな行政サービスを生み出し、さらには、住民が主導して公的サービスを提供するというイノベーションが起こる。

    • ② その理由も明確である。
      • いま、世界的に「社会起業家」の潮流が生まれているからである。
      • 社会起業家とは、起業家的手法を用いて、新たな公的サービスや社会システムを生み出していく人材のことであるが、これからの時代には、こうした社会起業家が、ネット・コミュニティを活用し、多くの住民を巻き込み、行政と共同して様々な公的サービスを生み出していく。

    • ③ 例えば、高齢化社会を迎え、多くの老人が孤独を抱える時代に、訪問や電話などで高齢
      • 者の話し相手になる「コンパニオンシップ」と呼ばれるサービスが広がっている。それも、営利目的ではなく、非営利のボランティア活動として行われている。これからの時代には、こうしたサービスも、ウェブ・テレビ電話などを活用し、行政主導ではなく、社会起業家や住民が主導して生み出していくだろう。

    • ④ そして、こうしたネット・コミュニティの最大の特長は、「地理的制約」を受けないと
      • いうことである。その気になれば、北海道の人と沖縄の人も互いに結びつき、智恵を交換し、共同で活動できる時代である。そして、このことは、行政サービスそのものにも根本的なイノベーションが起こることを意味している。

  • 6. 生活者と消費者が求める「喜び」と「ボランタリー経済」の復活
    • ① 「参加型イノベーション」には、深い意義がある。
      • 実は、この「参加型イノベーション」とは、それ自身が、生活者と消費者の「喜び」を増大させるものなのである。生活者や消費者にとっては、社会の様々なイノベーションに参加すること、それ自身が大きな「喜び」なのである。

    • ② なぜなら、人間であるかぎり、我々は、その心の奥深くに、「誰かの役に立ちたい」と
      • いう願望を持っているからである。そしてそれが、いま「Q&Aサイト」や「ナレッジ・コミュニティ」において、無償での教え合いや助け合いが起こる理由でもある。

    • ③ では、これは、何を意味しているのか。
      • 「ボランタリー経済」の復活である。

    • ④ すなわち、経済の原理には、「金銭の獲得」を行動原理とする「マネタリー経済」と、
      • 「精神の充足」を行動原理とする「ボランタリー経済」があるが、歴史的に見るならば、かつて地域コミュニティにおいて重要な経済原理であった「ボランタリー経済」は、資本主義の発展の中で、しばし影を潜め、「マネタリー経済」が主流となる時代が長く続いてきた。

    • ⑤ しかし、近年のネット革命とウェブ2・0革命は、ウェブサイト、メールマガジン、ブ
      • ログ、BBS(電子掲示板)、コミュニティなど、人々の心の中にある、「誰かの役に立ちたい」という願望を実現する優れた手段を数多く生み出したのである。そのため、いま、古く懐かしい「ボランタリー経済」が復活し、拡大し、そして、「マネタリー経済」との融合を遂げようとしているのである。

    • ⑥ そして、実は、社会全体のイノベーションを考えるとき、いま起こりつつあるこの「ボ
      • ランタリー経済の拡大」と、「マネタリー経済との融合」こそが、これからの「最大の社会的イノベーション」になっていくのである。

    • ⑦ そして、この「ボランタリー経済とマネタリー経済の融合」は、これから、先進資本主
      • 義国に共通の大きな潮流となっていくが、実はそのとき、この潮流は、日本型資本主義と日本型経営を再評価する流れとなっていくだろう。

    • ⑧ なぜなら、日本においては、古くから「働く」とは、「傍」(はた)を「楽」(らく)
      • にすること、との労働観があり、多くの人が、仕事において「世のため、人のため」との思いを語り、「体が動くかぎり、世の中のお役に立ちたい」との願いを語るからである。

  • 7. 「参加」から「自己表現」の喜びへ
    • ① さて、ふたたび話を「参加型イノベーション」に戻そう。
      • 先ほど、生活者や消費者がイノベーションのプロセスに「参加」するということは、同時に「社会貢献」という喜びが得られるということでもあると述べた。
      • しかし、この「参加」を通じて、人々は、もう一つの喜びも味わえる。
      • それは、「自己表現」の喜びである。

    • ② 例えば、いまでは簡単に自分のブログでラジオ局を開局でき、フリッカーというサイト
      • では写真を公開でき、ユーチューブでは、動画を投稿できる。
      • そして、こうして多くの人々が「自己表現」のために公開した文章、音声、写真、映像が、そのまま、社会全体の「知的資産」になっていくのである。

    • ③ こうした手法は、一見雑多に見える膨大な情報の中から、価値ある知見を得るという意
      • 味で極めて重要な手法になっていくが、これをウェブ2・0革命の論者は、「集合知」(Wisdomof Crowds)と呼んでいる。これは文字通り「群集の智恵」という言葉であるが、多くの人々が素朴に自己を表現した情報も、それが膨大に集まれば、社会全体にとって価値ある情報となることを意味している。

  • 8. 「自己表現」から「自己発見」へ
    • ① 人々が味わうこの「自己表現」の喜びは、さらにどこに向かうのか。
      • それは、「自己発見」の喜びに向かう。
      • その象徴が、いま、ウェブ2・0革命を超える「ウェブ3・0革命」の最も新しい動きとして注目されている「セカンド・ライフ」である。
      • これは、ウェブの世界に三次元仮想世界を創り、その中で、多くの人々が自分の「化身」(アバター)を創って参加し、様々な活動をするものである。

    • ② しかし、こう述べると、「それは、いわゆる三次元空間のゲームではないか」と思われ
      • るかもしれないが、そうではない。このセカンド・ライフは、ゲームのように決められたルールや物語はなく、提供されるコンテンツも、この世界に参加する人々が自発的に自由に創りだしたものである。

    • ③ そして、ここで重要な要素が、参加者が、それぞれ自分の好きな「化身」(アバター)
      • を創って、他の参加者とコミュニケーションができることである。
    • ④ 現代は、多くの若者の中で「自分探し」という言葉が流行となり、多くの人々が「自己
      • 発見」の欲求を抱え、「心の癒し」を求めている時代であるが、ウェブ革命は、そうした意味でも、また新たな機会を生み出していくだろう。

  • 9. さらなる技術革新がもたらす未来
    • ① では、いまなぜ、このような「参加型イノベーション」が起こっているのか。
      • その理由は明確である。

      • ネット革命とウェブ2・0革命によって、人々のコミュニケーション技術とコミュニティ技術が飛躍的に進化したからである。

    • ② しかし、この技術のイノベーションも、まだ序曲に過ぎない。
      • 例えば、もし「自動翻訳技術」が発達すれば、言葉の壁を越えて世界中にコミュニティが広がっていく。ネット革命によって英語が国際共通言語になったとはいえ、やはり、世界には英語を話さない人々も、まだ数多くいる。

    • ③ また、セカンド・ライフのような「三次元仮想世界の技術」がさらに発達すれば、自宅
      • に居ながら仮想世界の中で世界中を旅して回り、世界各地の人々とコミュニケーションすることもできる。
      • 特に、体の不自由な老人や障害を持つ人々には、大きな可能性が拓ける。
      • もともと、このセカンド・ライフを開発し、運営している米国のリンデンラボ社は、このセカンド・ライフを、そうした体の不自由な人々のために創ったと述べている。

  • 10. 歴史的な「参加型社会」が到来する
    • ① では、この「参加型イノベーション」は、これから社会全体に、何をもたらすのか。
      • そのビジョンを述べておこう。
      • それは、直接民主主義による「参加型社会」を生み出していく。

    • ② しかし、ウェブ2・0革命の中で、最近、「ロングテール」という考えが広がっている
      • が、多品種少量生産の技術が普及し、低コストの情報伝達と商品流通が可能になったことにより、これからの時代には、ごく少数の消費者のニーズに対しても、肌理細やかに対応した商品を提供できるようになっていく。

    • ③ そして、さらには、プロシューマ型開発が普及することによって、消費者は、自ら直接
      • 商品の開発にも関わり、世界に一つしかない「自分だけの商品」を創り、手に入れることができるようになっていく。こうした「直接民主主義」的な経済の実現は、経済の分野での最大のイノベーションとなっていくだろう。

    • ④ そして、同様のことが、「文化」の世界でも起こる。
      • しかし、楽曲のデジタル化とネット販売が普及するにつれて、音楽の世界でも「ロングテール」の法則が通用するようになってきた。そのため、これからの時代には、ごく少数のファンが支持するインディーズ・レーベルの音楽でも、十分に流通させることができるようになり、音楽ファンは、ブームに煽られてメガヒット曲を買わされるのではなく、自分の本当に好きな曲を、自分の判断で購入することができるようになっていく。

    • ⑤ そして、このことは、同時に、言葉の本来の意味での「豊かな文化」が、この国に生ま
      • れてくることを意味している。
      • なぜなら、「文化の豊かさ」とは、まさに「文化の多様性」のことであり、多くの人々が、それぞれの個性に従って自己を表現し、自分が本当に望んでいる文化を享受できる社会が到来することに他ならないからである。

  • 11. 人々が真に求めているイノベーションとは、何か。
    • それは、何よりも、いま、この社会の片隅で様々な思いを抱いて働き、生活している無数の人々が、この社会の変革のプロセスに喜びを持って参加できることではないか。そして、日々の労働の中で、生活の中で、誰かの役に立っているとの喜びを感じられることではないか。

    • それは、何よりも、この一度かぎり与えられた人生において、自由に生き生きと自分の個性を表現できることではないか。そして、自分の中の未知の自分、新たな自分を発見できることではないか。 そうした「人々の社会変革への参加」と「精神的豊かさの実現」こそが、これからの時代に求められている、真のイノベーションなのではないだろうか。

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